最近AIの進化が目まぐるしいですが、オープンエビデンスはご存じでしょうか?
オープンエビデンス(OpenEvidence)は、「医療従事者向けに特化して作られた医療版ChatGPT」のような生成AIで、エビデンスを示しながら臨床判断をサポートするツールです。
こちらの特徴と、実際に登録の仕方をお伝えします。
どんなAIか(ざっくり)
- 医学論文・ガイドラインなど、査読済み文献を大量に学習した医療特化の大規模言語モデル(LLM)を使ったプラットフォームです。
- 医師や医療従事者が自然文で質問すると、関連するエビデンスを検索・要約し、出典付きで回答を返す「臨床意思決定支援AI」です
一般的なChatGPTとの違い
- 汎用ではなく「医療専用」で訓練されており、臨床現場で使うことを前提にチューニングされています。
- 文献出典を必ず示し、医学的ハルシネーション(それっぽいが根拠のない回答)を減らす設計になっている点が大きな特徴です。
- 医療資格のない一般ユーザーでも利用できますが、利用回数に制限があります。
使う際の注意
患者さんを特定できる個人情報は絶対に入力しないようにしましょう。
個人情報の入力はどのAIでも基本的に避けるべきですが、オープンエビデンスはこちらの入力内容を学習に使用するとはっきり言われているので絶対に入力してはいけません。
希少疾病などで直接の個人情報を入力しなくても年代と性別と地域などで特定される場合にも注意が必要です。
登録してみましょう
①まずはオープンエビデンスを検索してみましょう。以下のOEのアイコンです。

②サイトは以下のようになっています。ここで初回はsing up、2回目以降はlog inしてください。

③sing up画面でメールアドレスを登録します。もしくはグーグル、マイクロソフト、アップルアカウントでも登録できます。メールアドレス入力後パスワードを決めましょう。


④Nameに名前(免許証と同じになるよう漢字でフルネーム)とOccupationに資格(薬剤師ならPharmacist)、医療資格情報を登録します。医療資格情報は私の場合「Browse」のところに薬剤師免許の写真をアップして使えるようになりました。
オープンエビデンスは入力内容を学習すると記載しましたが、登録に使用した個人情報は保護されます。

⑤実際に疑問点を「Ask a medical question」に入力してみましょう。日本語で大丈夫ですが、英語の方が精度が高いという話も聞きます。
私は日本語でしか使用したことがないですが、とくに間違ってそうなことはありませんでした。

他のAIと検索結果を比較してみました
AIとしてはチャットGPTまた、検索能力に特化したAIとしてはperplexity(パープレキシティ)が有名だと思います。これらと、オープンエビデンスに同じ質問を投げかけた場合の返答の違いを比べてみましょう。以下の例題を各AIに投げかけたときの回答をそのまま引用します。
例題「グーフィスをコンプライアンス向上のために食後投与した場合どのていどの効果が認められるか?」
①チャットGPT(通常の検索)
一般的に、エロビキシバット(商品名:グーフィス)は朝食前投与が推奨とされています。理由は、食事刺激による胆汁酸分泌のタイミングに合わせて腸管内の胆汁酸濃度を高め、排便を促す作用を最大限に発揮するためです。
食後投与にした場合の効果については、臨床試験として明確に比較データが公表されているわけではありません。
ただし、薬理作用から考えると、次のように推測されます:
◆ 期待される変化(推測ベース)
- 効果発現が遅れる可能性
食後に投与すると、胆汁酸分泌のピークを外す可能性があり、効果が弱まったり発現時間が遅くなることが考えられます。 - 完全に効果が消失するわけではない
薬は腸管内で局所的に作用するため、まったく効かなくなるわけではなく、**「やや減弱する可能性」**というレベルと捉えられます。
◆ 実臨床での扱い
- どうしても朝食前が難しい患者には、まずは服薬継続を優先して食後投与を試みるケースもあります。
- その際は、排便状況(排便回数・便性・効果発現時間)を確認しながら調整することが一般的です。
◆ 注意点
個々の反応差が大きいため、
「どの程度効果が落ちるかを定量的に示すデータは存在しない」
という点は押さえておく必要があります。
必要であれば、患者説明用の文章や薬局内向けメモの形にまとめることもできますので、言ってください。
②パープレキシティ
グーフィス(エロビキシバット)については、食後投与の正式な用法・有効性データはなく、「コンプライアンス向上目的で食後に変更した場合、どの程度効果が落ちるか」は定量的には不明です。現状、「効果は期待できる可能性はあるが、エビデンスも承認もなく推奨はできない」という整理になります。closedi+1
食後投与に関するエビデンス状況
- 製造販売元のQ&Aでは、「食直前・食後・食間・就寝前、頓用での服用は承認された用法ではなく、有効性・安全性の検討も行っていないため推奨しない」と明記されています。med.mochida
- また「グーフィスは1日1回食前投与」が承認用法であり、食後投与に関する臨床試験データはないとされています。closedi+1
なぜ食前投与なのか(食後にすると何が起こり得るか)
- 回腸末端のIBATを胆汁酸が再吸収される前にブロックすることで大腸への胆汁酸流入を増やすのが本来の設計であり、食事刺激で胆汁酸が十二指腸に放出される「前」に投与するのが望ましいとされています。med.mochida
- 「食事の刺激で胆汁酸が増えた状態で服薬するより、食前投与の方が便通改善効果が高いと考えられる」との解説があり、理論的には食後投与では効果減弱が懸念されますが、どの程度落ちるかを比較した試験はありません。closedi
実臨床データ(食前だが投与タイミングの幅)
- 大規模PMSでは、朝食前・昼食前・夕食前いずれの投与タイミングでも、排便回数・BSFS・満足度はいずれも有意に改善し、タイミングによる有効性の明確な差は認められていません(いずれも「食前」投与)。pmc.ncbi.nlm.nih
- 同じく実臨床の解析で、夕食前投与(食前)でも週あたり自発排便回数が有意に増加し、安全性も問題ないことが示されています。eapharma
コンプライアンス目的での現実的な考え方(実務コメント)
- エビデンス・適正使用の観点からは、まず「どれかの食前(朝・昼・夕)」への統一でコンプライアンスを図るのが筋であり、食後固定への変更は原則避けるべきと整理されます。med.mochida
- どうしても食前服用が守れず、食後なら確実に飲めるというケースでは、「効果減弱や下痢リスクがどう変わるかはデータがないオフラベル」であることを医師と患者に明示し、他の便秘薬(マクロゴール等)への切替も含めて検討するのが安全です。kirishima-mc+1
まとめ(質問への直接回答)
- 食後投与時の排便回数や自発排便率を定量比較した試験はなく、「○割まで効く」といった具体的な効果低下率は示されていません。closedi+1
- 作用機序・製造元情報から、「食後にすると本来より効果が弱くなる可能性が高く、かつエビデンスも承認もない」ため、コンプライアンス目的で安易に食後へ変更することは推奨できない、というのが現時点の回答になります。med.mochida+1
- https://closedi.jp/2518/
- https://med.mochida.co.jp/qa/gof-h.html
- https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11863239/
- https://www.eapharma.co.jp/medical/constipation-useful/retrospective-study-on-japanese-chronic-constipation-patients-with-goofice-administration
- https://kirishima-mc.jp/data/wp-content/uploads/2023/04/712fcbcea494506a836062a668da27ce.pdf
- https://www.city.kagoshima.med.or.jp/kasiihp/wordpress/wp-content/uploads/2018/02/H30-11.pdf
- https://www.pmda.go.jp/files/000232054.pdf
- https://rikunabi-yakuzaishi.jp/contents/hiyari/234/
- https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/108/1/108_46/_pdf
- https://www.jnmjournal.org/journal/view.html?doi=10.5056%2Fjnm20263
③オープンエビデンス
グーフィス(エロビキシバット)は、慢性便秘症治療薬として日本で広く使用されています。食後投与によるコンプライアンス向上の効果については、複数の臨床試験および市販後調査で検討されています。
エロビキシバットは本来「朝食前」の投与が推奨されていますが、食後投与でも有効性・安全性が維持されることが示されています。高齢者を含む慢性便秘患者を対象とした大規模市販後調査では、食後投与でも排便回数の有意な増加(週2.9回→5.3回、p<0.001)および便性状の改善が認められています。副作用発現率も食前・食後で大きな差はなく、忍容性も良好です。[1]
また、がん患者を対象とした研究でも、食事量や食事タイミングに関係なく、排便回数や便性状の改善効果は維持されることが示されています。したがって、食後投与によるコンプライアンス向上を目的とした場合でも、臨床的な効果は十分に期待できます。[2]
ただし、薬物動態的には食後投与で血中濃度が低下するものの、臨床的な排便促進効果には大きな影響はないと考えられています。現時点で日本消化器病学会などのガイドラインは「朝食前投与」を推奨していますが、患者の生活スタイルや服薬アドヒアランスを考慮し、[3][1]食後投与でも十分な効果が得られると判断できます。[1][2]
まとめると、グーフィスを食後に投与した場合でも、排便回数や便性状の改善効果は十分に認められます。忍容性も良好であり、コンプライアンス向上のための食後投与は臨床的に妥当な選択肢です。[1][2]
食後投与による効果が十分に認められるとのことですが、実際に「食後投与」と「朝食前投与」で長期的な治療成績やQOL(生活の質)に差があるかどうか、特に高齢者やがん患者など特定集団での比較研究のエビデンスをさらに調べてみませんか?
- Safety and Efficacy of Elobixibat, an Ileal Bile Acid Transporter Inhibitor, in Elderly Patients With Chronic Idiopathic Constipation According to Administration Time: Interim Analysis of Post-Marketing Surveillance. Nakajima A, Fujimaki M, Arai Y, Emori K. Journal of Neurogastroenterology and Motility. 2022;28(3):431-441. doi:10.5056/jnm20263.
- Elobixibat Effectively Relieves Chronic Constipation in Patients With Cancer Regardless of the Amount of Food Intake. Ozaki A, Kessoku T, Kasai Y, et al. The Oncologist. 2021;26(10):e1862-e1869. doi:10.1002/onco.13879.
- Effect of Single and Multiple Doses of Elobixibat, an Ileal Bile Acid Transporter Inhibitor, on Chronic Constipation: A Randomized Controlled Trial. Kumagai Y, Amano H, Sasaki Y, et al. British Journal of Clinical Pharmacology. 2018;84(10):2393-2404. doi:10.1111/bcp.13698.
比較結果
チャットGPTやパープレキシティの返答は一般的な当たり障りのないものになりましたが、オープンエビデンスではより踏み込んだ返答が返ってきました。大規模市販後調査の結果も参照されており信頼性は十分に高そうです。
実際にグーフィス食後投与に対して疑義照会が必要かどうかは保険上の問題もありますので議論は控えますが、実臨床には非常に有効な回答だと思います。
ただし、オープンエビデンスは臨床論文やガイドラインを参照しているため医薬品の商品名が通じない場面がまれにありました。例えば「リオナの妊婦への安全性」と検索した際には、以下のようになりました。※今回は検索結果の一文抜粋
チャットGPT:リオナは「理論上・実験上は妊婦・胎児への重大なリスクは低いとされてきた鉄剤」であり、妊娠中の鉄欠乏性貧血の治療薬として「使用されてきた実績」がある。しかしながら「安全性が確立した」とは言えず、妊婦・授乳婦への使用は「必要性・リスク」を勘案した上で慎重に判断する必要がある。妊娠中に鉄不足が疑われるなら、鉄剤の選択肢や鉄+栄養指導(食事・サプリなど)も含めた包括的な管理を、医師・薬剤師で検討すべき。
パープレキシティ:リオナ錠(クエン酸第二鉄水和物)は、妊婦に対する安全性が十分に確立しておらず、「慎重投与(有益性が危険性を上回る場合のみ)」の扱いです。
オープンエビデンス:「リオナ」は医薬品名として国際的な医学文献や主要な薬剤データベースに認識されていません。
うまく答えが出ない際には国際的な文献、薬剤データベースで認識される薬剤名で検索しなおしましょう。
まとめ
オープンエビデンスは医療に特化したAIとして日常業務を強力にサポートしてくれるツールとなります。その特性を有効活用していきましょう。
本記事は、一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断や治療を推奨するものではありません。またAIの利用時は個人情報の流出とハルシネーション(AIによる誤回答)に十分ご注意ください。
本記事の内容に基づく自己判断による治療や投薬等によって生じた損害について、当サイトは一切の責任を負いかねます。



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