



アボルブ服用者は献血NG!? 意外と知らない「半年ルール」
今回は「アボルブ服用者は服用終了後半年間献血できない」という話題を、4コマ漫画でご紹介しました。
漫画の中では、調子のいい患者さんが「健康の証」として献血に行こうとするものの、薬剤師カロがそれをストップ。
「血を抜くと薬が効かないの?」とキョトンとする患者に、「妊婦さんへの影響を避けるためです」と優しく説明するオチでした。
アボルブ(デュタステリド)の基本情報
- 一般名:デュタステリド
- 適応症:前立腺肥大症
- 用法・用量:通常、成人男性にデュタステリドとして1日1回0.5mg経口投与
- 剤形:カプセル剤(先発品アボルブ)、錠剤(ジェネリック)
- 禁忌:
- 女性
- 小児等
- 本剤の成分およびほかの5α還元酵素阻害薬に対し過敏症の既往歴がある患者
漫画の補足:「献血できない」の理由
アボルブは、ジヒドロテストステロン(DHT)の生成を抑制します。妊娠中の女性が服用または薬剤に触れると、男児胎児の外生殖器の正常な発達に悪影響を及ぼすリスクがあるため女性に禁忌となっています。軽吸収されるので触れるのも禁止な点に注意です。
献血で血液中にデュタステリドが残存していると、妊婦さんに輸血された際、男性胎児の生殖器の発育に影響を与える可能性があります。
このため、日本赤十字社ではアボルブ服用後、6か月間は献血を控えるよう明記しています。
そのほか日本赤十字社では下記のような医薬品、疾病で献血が制限されていますので詳しくは引用元ホームページをご参照下さい。
(3)治療が終了し、最終服用日を含む3日間は献血できないお薬
※最後に服薬した日を1日目とカウントし、4日目から献血可能
- 抗生剤、抗真菌薬、抗ウイルス薬
- ピロリ除菌薬
- 抗うつ薬、抗精神病薬
- 喘息治療薬(ステロイドホルモンは不可、また、1カ月以内に発作が無く、良好にコントロールされている場合に限る)
- 神経障害性疼痛治療薬(リリカ、タリージェ等)
(4)治療終了後、一定期間献血をお願いできないもの
- ステロイドホルモン【治療終了後1ヵ月献血不可】
- 抗甲状腺薬【治療終了後1年献血不可】
- 抗がん剤【治療終了後5年献血不可】
- AGA治療薬(フィナステリド、プロぺシア、プロスカー等)【服薬中止後1カ月献血不可】
- AGA治療薬(デュタステリド、ザガーロ、アダボート等)【服薬中止後6カ月献血不可】
(5)ご病気の内容や薬の影響のため献血をお願いできないもの
- 糖尿病治療薬
- 狭心症治療薬
- 抗不整脈薬
- 抗血栓薬・抗凝固薬
- 抗けいれん薬
- チガソン(乾癬治療薬)
- ラエンネック・メルスモン(ヒト由来プラセンタ注射薬)
日本赤十字社 福岡県赤十字献血センター「服薬と献血について」より
実務上の注意点
- 患者自身がこのルールを知らないことが多いため、服薬指導時に一言添えると親切です。
- 健康意識の高い高齢男性では、献血習慣がある方も少なくありません。
- 「妊婦に輸血の可能性があるから」という説明が伝わりやすく、納得してもらいやすいポイントです。
漫画に盛り込めなかった+α情報
- アボルブ(先発品)は軟カプセル剤であり、内容物の漏出や経皮吸収のリスクがあるため、一包化が推奨されていません。一方、ジェネリックのデュタステリド錠はフィルムコーティングされた錠剤で、内容物が外部に漏れにくく、経皮吸収のリスクも低いため、一包化が可能なものがあります。
※個別の製剤についての特徴は調剤前にご確認ください。 - アボルブとザガーロ、同成分でも何が違う?
アボルブカプセルとザガーロカプセルは、どちらも有効成分「デュタステリド(0.5mg)」を含む薬剤ですが、処方目的や薬価、先発品扱いなどに違いがあります。以下に現場で混乱しがちなポイントを整理します。
薬品名 ジェネリック 適応 用法用量 アボルブカプセル デュタステリドAV 前立腺肥大症 0.5㎎1日1回 ザガーロカプセル デュタステリドZA 男性型脱毛症 0.1㎎1日1回必要に応じて0.5㎎1日1回
アボルブは泌尿器科、ザガーロは皮膚科や美容系クリニックで処方されることが多く、処方権限や診療科の保険適応にも影響します。
なお、ザガーロは保険適用外の自費診療で処方されることがほとんどです。
結びに
「服薬後の献血制限」という切り口は、患者にとっても薬剤師にとっても印象に残るポイント。
副作用の話だけでなく、こうした“社会的な影響”を伝えることも薬剤師の大事な仕事です。
※免責事項
本記事は、一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断や治療を推奨するものではありません。
記事中で取り上げている薬剤情報は、信頼できる資料に基づいて正確に記載していますが、漫画内の会話やエピソードはフィクションであり、実際の医療現場の状況とは異なる場合があります。
実際の診療にあたっては、必ず医師や薬剤師等の専門家にご相談いただき、最新の添付文書等をご確認ください。
本記事の内容に基づく自己判断による治療や投薬等によって生じた損害について、当サイトは一切の責任を負いかねます。
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