



今回の4コマ漫画では、フィブラート系脂質異常症治療薬「パルモディア錠(一般名:ペマフィブラート)」を取り上げました。
漫画では、「腎排泄型が多いフィブラートの中で、パルモディアは“胆汁排泄型”なんだよ」という薬剤師の説明に対して、
新人薬剤師が「体に気を使ってて、えらいですね…」と返してしまう、ちょっとズレたやり取りを描いています。
とはいえ、この“胆汁排泄型”という特徴は、薬剤師にとって非常に大事なポイントです。
基本情報の整理(2024年5月時点)
- 一般名:ペマフィブラート
- 製品名:パルモディア錠/パルモディアXR錠
- 適応症:高脂血症(家族性高脂血症含む)
- 用法・用量:
- 通常錠:1回0.1mg、1日2回経口投与 最大1回0.2㎎1日2回まで
- XR錠:1日1回、0.2mg トリグリセライド高値の程度により0.4mg
※eGFR30未満の場合は慎重に投与 0.2㎎/日までとする - 禁忌:
- 重度の肝障害、あるいは胆道閉塞
‐ 胆石
- 妊婦または妊娠している可能性のある女性
- シクロスポリン、リファンピシン投与中
胆汁排泄型であることの意味
多くの従来型フィブラート(ベザフィブラートやフェノフィブラートなど)は腎排泄型であり、
腎機能障害を有する患者では使用が難しいとされてきました。
一方、パルモディアは主に胆汁排泄型で、腎機能にあまり依存しません。
そのため、軽度〜中等度の腎機能低下患者にも投与可能な場合があります。透析患者さんに処方される例もあります。
ただしeGFR30未満は慎重投与なので十分にご注意ください。
薬剤名 | 適応 | 用法用量 | 主な禁忌事項 | 代謝・排泄経路 |
---|---|---|---|---|
クロフィブラート | 高脂質血症 | 750~1500㎎を 2~3回にわけて | 胆石・その既往、妊婦・授乳婦 | 腎 |
ベザフィブラート | 高脂血症(家族性含む) | 400㎎ 分2朝夕食後 | 人工透析、重腎障害、SCr2mg/dl以上、妊婦・授乳婦 | 腎 |
フェノフィブラート | 高脂血症(家族性含む) | 106.6~160㎎を1日1回食後 | 肝障害、胆嚢疾患、腎障害(Ccr40未満)、妊婦授乳婦 | 腎 |
ペマフィブラート | 高脂血症(家族性含む) | 普通:0.1mgを1日2回 XR:0.2㎎または0.4㎎を1日1回 | 肝障害、胆石、妊婦・授乳婦等、シクロスポリンリファンピシン投与中 | 肝 |
本剤の成分に過敏症の既往は共通 |
参照:各添付文書
実務上の注意点と補足
- XR錠は徐放性製剤のため、絶対に割ってはいけません。
効果や安全性に影響を及ぼす可能性があります。
普通錠は分割可能です。分割後湿気を避けて室温で保管の上4か月以内に使用することとされています。 - 食事の影響が少なく、食前・食後の指定はありません。
服薬指導が比較的簡単です。 - 併用禁忌があります。
ほかのフィブラート系では併用「禁忌」の薬剤はありませんが、シクロスポリン・リファンピシンと併用禁忌のめてご注意ください。 - スタチンとの併用も可能です。
フィブラート系薬剤は以前「原則禁忌」でしたが、「併用注意」に緩和され、併用療法の選択肢が広がっています。 - 副作用には注意:胆石症、血清CK上昇、糖尿病の増悪、横紋筋融解症(特にスタチン併用時)などが報告されています。
漫画に盛り込めなかったネタ
- 薬物動態の違い
XR錠はCmaxが抑えられており、AUCは通常錠と同等。
→ 急激な血中濃度上昇を避け、副作用リスクの軽減が期待されます。 - 薬価の豆知識(2025年5月現在)
-パルモディア錠0.1mg:32.4円
- パルモディアXR錠0.2mg:1錠 60.0円
- パルモディアXR錠0.4mg:1錠 111.0円
ほかのフィブラート系はジェネリックも発売され値段が抑えられているのでややお高めの印象です。
例:フェノフィブラート53.3㎎武田テバ8.8円、同80㎎ 10.4円、ベザフィブラート徐放錠各メーカー100㎎、200㎎共通 10.4円
結びの一言
患者さんにとっても薬剤師にとっても「えらい薬」に聞こえるかもしれませんが、
私たち薬剤師としては、薬の“排泄経路”にも着目した処方意図の理解と指導が大切です。
今後も現場の「なるほど!」につながるような薬の豆知識を、漫画とともにお届けしていきます。
免責事項
本記事は、一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断や治療を推奨するものではありません。
記事中で取り上げている薬剤情報は、信頼できる資料に基づいて正確に記載していますが、
漫画内の会話やエピソードはフィクションであり、実際の医療現場の状況とは異なる場合があります。
実際の診療にあたっては、必ず医師や薬剤師等の専門家にご相談いただき、最新の添付文書等をご確認ください。
本記事の内容に基づく自己判断による治療や投薬等によって生じた損害について、当サイトは一切の責任を負いかねます。
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