



✩【今回はジクトルテープの紹介です】
4コマ漫画では、いつものジクトルテープに「バラの香り」が加わったことに気づいた患者さんとの、ほっこりしたやりとりを描きました。
こんなこと、情報がないと気づけないですよね。
じつはこの香り、2022年に製剤変更されたことで加わったものなんです。
基本情報
成分
ジクロフェナクナトリウム
適応
・各種がんにおける鎮痛
・腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群及び腱鞘炎における鎮痛・消炎
用法用量
〈各種がんにおける鎮痛〉通常、成人に対し、1日1回、2枚を胸部、腹部、上腕部、背部、腰部又は大腿部に貼付し、1日(約24時間)毎に貼り替える。なお、症状や状態により1日3枚に増量できる。
〈腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群及び腱鞘炎における鎮痛・消炎〉通常、成人に対し、1日1回、1枚又は2枚を胸部、腹部、上腕部、背部、腰部又は大腿部に貼付し、1日(約24時間)毎に貼り替える。
禁忌
・消化性潰瘍のある患者
・重篤な血液の異常のある患者
・重篤な腎機能障害のある患者
・重篤な肝機能障害のある患者
・重篤な高血圧症のある患者
・重篤な心機能不全のある患者
・本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
・アスピリン喘息又はその既往歴のある患者
・妊婦又は妊娠している可能性のある女性
・トリアムテレンを投与中の患者
香りが加わった理由
ジクトルテープには、**DMSO(ジメチルスルホキシド)**という、経皮吸収を高める添加物が含まれていました。これが独特なにおいとして不評なことも。
そこで、2022年6月の製剤変更で「フェニルエチルアルコール(バラのような香り)」を追加したことで、においがやわらぎました。
実務の解説ポイント
- 香りはほんのり。香水のような強さはなし
※筆者はまだ実際の香りを確かめられておらず、製剤見本を入手できたらぜひ試してみたいと考えています。
もし実際に香りをかいだことがある方がいらっしゃったら、ぜひコメントで教えてください! - 成分、補助効果に変化はなし
内服製剤 vs. ジクトルテープ ― 薬物動態を比べてみる
製剤 | 投与設計 | Cmax(ng/mL) | Tmax(hr) | AUC | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
ボルタレン錠25 mg | 1回投与 | 415 ± 57 | 2.72 ± 0.55 | (AUC0‑24) 998 ± 84 | 吸収が速く、ピーク濃度が高いが T1/2 約1.2 hr と短いため日内変動が大きい |
ボルタレンSRカプセル (初回) | 1回投与 | 436 ± 116 | 7.0 ± 1.0 | (AUC0‑12) 1 687 ± 274 | 徐放化により Cmax は錠剤並みだがピークは遅延。半減期 1.5 hr と速やかに消失 |
ボルタレンSRカプセル (7日目) | 1日2回相当 | 416 ± 44 | 6.0 ± 0 | (AUC0‑12) 2 149 ± 386 | 定常状態で AUC が約1.3倍に上昇し、わずかに蓄積 |
ジクトルテープ 75 mg×2 枚 | 初回貼付 | 22.9 ± 7.1 | 13 (中央値) | (AUC0‑24) 372 ± 126 | 皮膚貯留を経て徐々に吸収、Cmax は経口の約1/18 |
ジクトルテープ (7日目) | 1日1回貼付 | 44.1 ± 10.0 | 10 (中央値) | 813 ± 169 | Cmax・AUC ともに約 2 倍へ上昇(定常化の途中) |
ジクトルテープ (14日目) | 1日1回貼付 | 64.0 ± 21.4 | 4 (中央値) | 1 070 ± 299 | さらに蓄積し、AUC は錠剤の約1倍に到達。T1/2 2.9 ± 1.4 hr |
◆ ここから読み取れるポイント
- ピーク濃度と立ち上がりが大きく異なる
経口錠は Cmax ≈ 400 ng/mL を 3 hr 未満で達成するのに対し、テープは初回 23 ng/mL 程度で 13 hr。急速な鎮痛が欲しい急性疼痛には経口が有利。 - ジクトルテープは貼り続けるほど血中濃度がじわじわ上昇
14日目には Cmax 64 ng/mL と初回の約3倍、AUC は錠剤相当へ。慢性痛・連日使用で真価を発揮。 - ジクトルテープは日内変動の平坦化
血中濃度カーブがなだらかなため「朝は切れて痛む」「夕方に効き目が落ちる」といった波を抑制。 - ジクトルテープの半減期は経口と同程度(2–3 hr)でも、テープが持続的に薬剤を放出するため24 hr 効果が持続。
- 高齢者でのCmax上昇に注意。腎・肝機能障害やポリファーマシー下では外用でも NSAIDs 系有害事象を意識。
まとめ:内服は“早く・高く・短く”、テープは“ゆっくり・低く・長く・蓄積”。急性痛には経口、慢性・がん疼痛には経皮吸収型といった使い分けが理にかなっています。
ジクトルテープ vs. ボルタレンテープ ― 製剤設計・禁忌・血中動態の違い
比較項目 | ジクトルテープ | ボルタレンテープ |
---|---|---|
製剤設計 | 経皮吸収型(全身作用を狙う) | 局所浸透型(患部の角質内濃度を重視) |
血中Cmax | 約64 ng/mL(14日目) | 約1.3 ng/mL※ |
Tmax | 4~13時間 | 約9時間※ |
AUC | 約1070 ng・hr/mL(14日目) | 約13.7 ng・hr/mL※ |
禁忌 | 内服NSAIDsと同様に多数あり(潰瘍、腎障害、妊婦など) | 「本剤の成分に過敏症既往」「アスピリン喘息」のみ |
備考 | がん疼痛に保険適応あり。貼付部位の自由度が高い | 血中移行は非常に低い |
- ※上記テープの薬物動態はジクロフェナク軟軟膏のもの(インタビューフォームより)
ボルタレンテープは「角質内濃度」で評価されており、血中濃度は極めて低く、生物学的同等性は1%ジクロフェナク軟膏との比較で確認されている。\ - 一方、ジクトルテープは内服薬に匹敵する血中濃度を目指して設計されており、がん疼痛など全身的な鎮痛が期待できる。
- 禁忌も大きく異なり、ジクトルは内服NSAIDsと同等の注意が必要だが、ボルタレンテープは最小限に抑えられているため、外用の第一選択として選ばれやすい。
結び
「香りが変わっただけで、こんなに会話が広がるんですね」
そんな声も聞かれる、ジクトルテープの「ほんのりバラの香り」。
ただの製剤変更に見えて、実は「情報提供のチャンス」があるのかもしれません。
次回もお楽しみに!
【免責事項】
本記事は、一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断や治療を推奨するものではありません。
記事中で取り上げている薬剤情報は、信頼できる資料に基づいて正確に記載していますが、
漫画内の伝道やエピソードはフィクションであり、実際の医療現場の状況とは異なる場合があります。
実際の診療にあたっては、必ず医師や薬剤師等の専門家にご相談いただき、最新の添付文書等をご確認ください。
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