2021年に発売されたツイミーグ錠(イメグリミン塩酸塩)。「新しいタイプの糖尿病治療薬」と聞いても、その作用機序がいまいちピンとこない…そんな薬剤師の皆さんも多いのではないでしょうか?
今回は、ツイミーグ錠の独特な作用機序を6コマ漫画でわかりやすく解説し、この薬の特徴と臨床での位置づけについてお話しします。NAD⁺の生産ラインが止まり、膵β細胞=“工場長”が大パニック!というところからご覧ください。






ツイミーグ基本情報
- 適応:2型糖尿病
- 用法用量:1回1000mg、1日2回、朝夕食後に経口投与
腎機能による用量調節eGFR 15–45:1回500mg 1日2回
eGFR 10–15:1日1回
eGFR 10未満:非推奨 - 禁忌:本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
重症ケトーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡、1型糖尿病の患者
重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある患者
ツイミーグ錠の2つの作用機序を詳しく解説
1. NAMPT遺伝子の活性化によるNAD+産生促進
**NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)**は、細胞のエネルギー代謝において重要な補酵素です。糖尿病状態では、このNAD+の産生が低下し、糖代謝が悪化します。
ツイミーグ錠はNAMPT(ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ)遺伝子の発現を促進し、NAD+の産生を回復させます。これにより:
- 解糖系の活性化
- 糖の細胞内取り込み促進
- インスリン分泌の改善
2. ミトコンドリア呼吸鎖複合体Ⅰの適度な阻害
ミトコンドリアの呼吸鎖複合体Ⅰを軽度に阻害することで:
- 活性酸素種(ROS)の産生抑制
- インスリン感受性の改善
- 膵β細胞の保護
この作用により、糖尿病の根本的な病態である酸化ストレスとインスリン抵抗性の両方にアプローチできます。
メトホルミンとの関係は?
漫画のオチにもありましたが、ツイミーグ錠はメトホルミンと構造が類似した「メトホルミン類似体」です。しかし、作用機序は大きく異なります。
メトホルミンの作用機序以下の通りです。
主に肝臓における糖新生を抑制し、膵β細胞のインスリン分泌を介することなく血糖降下作用を示す。また、末梢組織における糖取り込みの促進、小腸における糖吸収の抑制等も知られている (メトグルコ添付文書より)
また各構造は以下のようになります。(構造式は各添付文書より)

臨床での位置づけと特徴
臨床的特徴
- 低血糖リスクが低い:インスリン分泌促進作用が穏やか
- 体重増加しにくい:むしろ軽度の体重減少効果
- 腎機能への影響が少ない:腎排泄率が低い
- 心血管系への好影響:酸化ストレス軽減による
注意すべき副作用
- 消化器症状(下痢、腹痛、嘔気)が比較的多い
- 肝機能異常(まれ)
- 低血糖(他の糖尿病薬との併用時)
服薬指導のポイント
患者さんへの説明では以下の点を強調しましょう:
- **「新しいタイプの糖尿病薬」**であることを説明
- 効果発現には時間がかかる:2-3ヶ月での評価が必要
- 下痢などの消化器症状は初期に多いが、多くは軽減することを伝達
まとめ
ツイミーグ錠は、従来の糖尿病薬とは異なる独特な作用機序を持つ新しい選択肢です。NAMPT遺伝子活性化とミトコンドリア呼吸鎖複合体Ⅰ阻害という「二刀流」のアプローチで、糖尿病の多面的な病態にアプローチできる点が特徴的です。
低血糖リスクが低く、腎機能への影響も少ないため、高齢者や腎機能低下患者にも使いやすい薬剤として、今後の糖尿病治療において重要な位置を占めることが期待されます。
複雑な作用機序も、今回の漫画のように「細胞工場の改革」として捉えると理解しやすいのではないでしょうか。患者さんへの説明の際にも、ぜひこのような比喩を活用してみてください。
⚠️免責事項
本記事は、一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断や治療を推奨するものではありません。
記事中で取り上げている薬剤情報は、信頼できる資料に基づいて正確に記載していますが、漫画内の会話やエピソードはフィクションであり、実際の医療現場の状況とは異なる場合があります。
実際の診療にあたっては、必ず医師や薬剤師等の専門家にご相談いただき、最新の添付文書等をご確認ください。
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