「レキサルティ王と仲間たち〜脳内バランスはSDAMにおまかせ!〜」

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患者さんに伝わりやすい!レキサルティの作用機序を4コマ漫画で解説

はじめに

統合失調症やうつ病の治療において、患者さんに薬の作用機序を分かりやすく説明することは、服薬アドヒアランス向上の重要なポイントです。今回は、レキサルティ(ブレクスピプラゾール)の複雑な作用機序を、親しみやすいキャラクター4コマ漫画で表現してみました。

レキサルティってどんな薬?

レキサルティ(一般名:ブレクスピプラゾール)は、2018年に日本で承認された比較的新しい抗精神病薬です。SDAM(セロトニン‐ドパミン アクティビティ モジュレーター)と呼ばれる新しい分類に属し、従来の薬剤と比べて副作用が少ないことで注目されています。

基本情報

レキサルティという名称は、ラテン語で「王」を意味する「レックス」と「医療者・患者が期待する結果」を意味する「レクサルト」から作成された造語です。この名前には、患者さんと医療者双方の期待に応える優れた治療効果への願いが込められています。

主な適応症

  • 統合失調症
  • うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)
  • アルツハイマー型認知症に伴う焦燥感、易刺激性、興奮に起因する、過活動又は攻撃的言動

特徴的な作用機序

レキサルティの最大の特徴は、複数の受容体に対して「必要な時に必要な分だけ」作用する精密な調整機能にあります。従来の薬剤が単一の受容体を強く刺激またはブロックするのに対し、レキサルティは脳内の神経伝達物質バランスを繊細に調整します。

ドパミンD2受容体への部分アゴニスト作用 脳内でドパミンが過剰な時はブレーキ役として働き、幻覚や妄想などの陽性症状を抑制します。一方、ドパミンが不足している時はアクセル役となり、意欲低下などの陰性症状を改善します。まさに「天秤」のような働きで、患者さんの状態に応じて自動調整してくれるのです。

セロトニン受容体への複合作用 5-HT1A受容体には部分アゴニストとして作用し、不安軽減や気分安定化を穏やかに促進します。同時に5-HT2A受容体はブロックすることで、精神病症状を抑制し、認知機能の改善や睡眠の質向上に寄与します。

アドレナリン受容体への調整作用 α1B受容体とα2C受容体をブロックすることで、心血管系の副作用を軽減しつつ、ノルアドレナリンの放出を適切に調整し、意欲の改善にも貢献します。

この「マルチターゲット・精密調整システム」により、統合失調症の陽性・陰性症状、うつ病、さらには認知症関連症状まで、副作用を最小限に抑えながら幅広い治療効果を発揮できるのです。

用法及び用量

統合失調症 通常、成人にはブレクスピプラゾールとして1日1回1mgから投与を開始した後、4日以上の間隔をあけて増量し、1日1回2mgを経口投与する。

うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る) 通常、成人にはブレクスピプラゾールとして1日1回1mgを経口投与する。なお、忍容性に問題がなく、十分な効果が認められない場合に限り、1日量2mgに増量することができる。

アルツハイマー型認知症に伴う焦燥感、易刺激性、興奮に起因する、過活動又は攻撃的言動 通常、成人にはブレクスピプラゾールとして1日1回0.5mgから投与を開始した後、1週間以上の間隔をあけて増量し、1日1回1mgを経口投与する。なお、忍容性に問題がなく、十分な効果が認められない場合に限り、1日1回2mgに増量することができるが、増量は1週間以上の間隔をあけて行うこと。

4コマ漫画「レキサルティくんと仲間たち」

複雑な薬理作用を患者さんに説明する際、専門用語を並べるだけでは理解してもらえません。そこで、脳内の神経伝達物質をキャラクター化した4コマ漫画を作成しました。

キャラクター紹介

レキサルティくん 冷静で調整上手な仲裁役。複数の受容体を同時にコントロールする特技を持つ。「バランスが大事だよ」が口癖。

ドパミンくん 元気だけど暴走しがち。多すぎると幻覚・妄想の原因となり、少ないと意欲低下を招く。「やる気出すぞ〜!」が口癖。

セロトニンちゃん 優しいけど不安定。気分や不安の調整を担当している。「心を穏やかに〜」が口癖。

エビリファイとの違いは?

同じSDAM系薬剤として知られるエビリファイ(アリピプラゾール)と比較すると、レキサルティには以下のような特徴があります。

セロトニン作用の違い

レキサルティはセロトニン作用がより強く、ドパミン作用は控えめです。これにより抗うつ効果や陰性症状の改善により優れているとされています。一方、エビリファイはセロトニン・ドパミン両方にバランス良く作用し、ドパミン作用がやや強めです。

副作用プロフィール

レキサルティは体重増加や代謝異常が起きにくく、アカシジアや不眠も少なめという特徴があります。エビリファイも副作用は比較的少ないですが、体重増加や耐糖能異常、アカシジアがやや多い場合があります。

使いやすさの観点

レキサルティは1日1回投与で継続しやすく、高齢者や子どもにも使いやすいとされています。エビリファイは多様な剤形(錠剤、OD錠、液剤、注射剤)とジェネリック医薬品があり、処方の自由度が高いという利点があります。

患者さんの症状やライフスタイル、副作用への耐性を考慮して、最適な薬剤を選択することが重要です。

まとめ

患者さんとのコミュニケーションにおいて、専門的な内容をいかに分かりやすく伝えるかは薬剤師の腕の見せどころです。

レキサルティは優れた薬剤ですが、その効果を十分に発揮するためには患者さんの理解と協力が不可欠です。私たち薬剤師が創意工夫を凝らして、患者さんに寄り添った服薬指導を心がけていきましょう。

重要なお知らせ:剤形変更について

レキサルティ錠1mgおよび2mgは、2024年3月に販売が中止されました。経過措置期間(在庫が流通し処方可能な期間)は2025年3月末までとなっています。

なお、レキサルティの口腔内崩壊錠(OD錠)0.5mg、1mg、2mgは引き続き販売されています。

薬剤師の皆様におかれましては、処方せんの確認や患者さんへの説明の際に、この剤形変更について十分ご注意ください。特に、通常錠からOD錠への切り替えが必要な患者さんには、服用方法の違いについて丁寧に説明することが重要です。


本記事は、一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断や治療を推奨するものではありません。
記事中で取り上げている薬剤情報は、信頼できる資料に基づいて正確に記載していますが、
漫画内の会話やエピソードはフィクションであり、実際の医療現場の状況とは異なる場合があります。
実際の診療にあたっては、必ず医師や薬剤師等の専門家にご相談いただき、最新の添付文書等をご確認ください。
本記事の内容に基づく自己判断による治療や投薬等によって生じた損害について、当サイトは一切の責任を負いかねます。

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