



今回はアポハイドローションの紹介です
今回の4コマ漫画では、手掌多汗症の治療薬「アポハイドローション」の作用機序や禁忌、使用方法、処方時の注意点などを解説しました。外用薬でありながら抗コリン作用を持つという特性から、注意すべきポイントが多い薬剤です。
基本情報の整理
一般名:オキシブチニン塩酸塩ローション20%
販売名:アポハイドローション20%
適応症:原発性手掌多汗症
用法・用量:就寝前に、両手掌に対しポンプ5押し分を目安として適量を塗布する。起床後、洗い流す。
禁忌:
- 閉塞隅角緑内障の患者
- 下部尿路閉塞疾患(前立腺肥大等)による排尿障害のある患者
- 重篤な心疾患のある患者
- 腸閉塞又は麻痺性イレウスのある患者
- 重症筋無力症の患者
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
原発性手掌多汗症とは
原発性手掌多汗症は、特定の病気や薬剤などの明らかな原因がないにもかかわらず、手のひら(手掌)に日常生活に支障をきたすほど多量の汗をかく疾患です
手の多汗症状が6カ月以上続き、以下の6症状のうち2項目以上当てはまる場合、「原発性手掌多汗症」と診断されます。
- 最初に手の多汗症状が出たのが25歳以下
- 左右の手のひらに汗をかく
- 睡眠中は発汗が止まっている
- 1週間に1回以上、手の多汗症状がみられる
- 家族に同じ症状の方がいる
- 手汗のために日常生活に支障をきたしている
漫画の補足
1コマ目では、ムスカリン受容体にオキシブチニンが結合し、エクリン汗腺からの発汗を抑制するという作用機序を説明しています。これは抗コリン作用によるもので、交感神経支配であるエクリン汗腺においてアセチルコリンの作用をブロックします。
2コマ目では、その抗コリン作用ゆえに緑内障や前立腺肥大などに禁忌である点を解説しています。
※アポハイド®ローション20%塗布時の全身曝露量は、オキシブチニン塩酸塩経口剤3mg単回投与時の全身曝露量を超えることがあるようです。 久光サポートウェブより
ポラキス錠(オキシブチニン)の通常用量2~3㎎を1日3回なのでそれなりの暴露量ですね。
3コマ目では、塗布量と使用タイミング、注意事項について説明。就寝前に5プッシュを塗布し、塗布後は目や口をさわらないように指導が必要です。通気性のある手袋は使用可能ですが、密閉性の高い手袋は使用を避ける必要があります。
4コマ目では、2つの剤形(4.32g/17.28g)がある点を紹介。
1本4.5mlで4.32gという分かりにくい数字が処方監査時に気を遣いますね。
実務上の注意点
- 外用薬であっても抗コリン作用による全身性の副作用(口渇、排尿障害、眼の調節障害など)が報告されています。特に小児や高齢者には慎重な観察が必要です。
- 主な副作用として以下のような症状が報告されています:
- 口が渇く
- 尿が出にくい、出ない
- 塗ったところに炎症やかゆみ、湿疹などの皮膚の異常がみられる
- 何日も便秘が続き、お腹が張って苦しく感じる
- ポンプ式ボトルのため、塗布回数(押す回数)がそのまま投与量に影響します。使用指導の際は「何プッシュか」を具体的に伝えることが重要です。
- 成分に無水エタノールを含むため、可燃性に注意。就寝前の使用であっても、暖房器具や喫煙との距離に配慮を促しましょう。
漫画に入りきらなかった豆知識
- 治療効果は早期から現れることが多く、4週での改善率がプラセボより有意に高かったとされています。
- 本剤の作用は手掌局所にとどまるよう設計されていますが、皮膚バリアの状態によっては吸収率が上昇する可能性があります。湿疹や傷がある部位には使用しないよう注意しましょう。
- アポハイドローションのラベルは水に強い紙で設計されています。
結びの一言
今回はアポハイドローションの解説をお届けしました。外用薬でありながら内服薬に匹敵する注意が必要な本剤、ぜひ処方・指導の際には今回のポイントを思い出してくださいね。
次回もどうぞお楽しみに。リクエストもお待ちしています!
本記事は、一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断や治療を推奨するものではありません。
記事中で取り上げている薬剤情報は、信頼できる資料に基づいて正確に記載していますが、
漫画内の会話やエピソードはフィクションであり、実際の医療現場の状況とは異なる場合があります。
実際の診療にあたっては、必ず医師や薬剤師等の専門家にご相談いただき、最新の添付文書等をご確認ください。
本記事の内容に基づく自己判断による治療や投薬等によって生じた損害について、当サイトは一切の責任を負いかねます。
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