ヘパリン類似物質外用液「水性」と「乳剤性」の問題を考える

お薬小ネタ漫画

今回は「ヘパリン類似物質外用液」のお話です。

ヒルドイドローション0.3%の一般名は「【般】ヘパリン類似物質外用液0.3% 」と記載されていました。

それが令和7年8月14日より「【般】ヘパリン類似物質外用液0.3%(乳剤性):以下、乳剤性」と「【般】ヘパリン類似物質外用液0.3%(水性):以下、水性」となりました。
従来のように“患者さんの希望でその場で変更”とはいかないケースが急増中です。

今回の4コマでは、
「処方は乳剤性。でも患者は水性を希望」
「えっ、また疑義か…!」
という薬局あるあるを描いています。


基本情報(添付文書ベース)

項目内容
一般名ヘパリン類似物質
剤形外用液(乳剤性/水性)、ローション、クリーム、軟膏など
効能・効果血栓性静脈炎(痔核を含む)、血行障害に基づく疼痛と炎症性疾患(注射後の硬結並びに疼痛)、凍瘡、肥厚性瘢痕・ケロイドの治療と予防、進行性指掌角皮症、皮脂欠乏症、外傷(打撲、捻挫、挫傷)後の腫脹・血腫・腱鞘炎・筋肉痛・関節炎、筋性斜頸(乳児期)
用法・用量1日1~数回、患部に塗布
禁忌出血性血液疾患(血友病、血小板減少症、紫斑病など)患者、僅少な出血でも重大な結果を来すことが予想される患者

漫画の補足:「乳剤性」「水性」って何が違うの?

分類特徴製品例(2025年8月時点)
乳剤性白濁した液体。油分を含む乳状の外観。ややベタつきがある。ヒルドイドローション、ラクール、NIT
水性透明な液体。さらっとしていて塗布後のベタつきが少ない。日医工、ニプロ、ニットー、YD

実務で注意すべき点

① 処方箋記載に注意

  • 「ヘパリン類似物質外用液(乳剤性)」と明記されていれば水性への変更は不可(疑義照会が必要)
  • ヒルドイドローションと記載されていた場合、今まで水性で調剤していた患者様へそのまま水性で調剤するのはアウト寄りのグレーゾーン
    ※今まで通りなんだからOKとの意見も見かけるのですが、担当のメーカーさんからははっきりNGと言われました。

② 出荷調整に注意

  • 近年、ヘパリン類似物質外用液は水性も乳剤性も出荷調整になるケースが多く、希望通りに準備できないことも
  • その場合、医師に再度処方の確認・変更依頼が必要になることも

③ 患者さんの「こだわり」に対応

  • 「透明なやつじゃないと気持ち悪い」
  • 「夏はさっぱりした水性がいい」
  • 「冬は保湿力のある乳剤性を希望」
    など、患者側の季節や好みによるリクエストも増加傾向

現場で役立つ視点・小ネタ

  • 処方医が分類の違いを認識していないことも多く、「えっ?別の剤形なんですか?」と言われることも。
    ※皮膚科の先生は患者さんとも話したうえで処方してくださることが多いけれど、他科でついでに「いつも皮膚科でもらってる保湿剤出して」っていうパターンでは剤形の違いは意識されていないことが多い印象です。
  • 同じ「外用液」としてひとくくりにされていた時代から、薬剤師の説明責任がより求められる状況に

結びに

今回の4コマでは、よくある薬局での“もやっと”場面を切り取りました。

患者さんの希望、処方の指定、在庫状況──
すべてが噛み合わないと「また疑義だ…」となりがちですが、
薬剤師の判断・説明力がますます重要になってきています。


📝免責事項

本記事は、一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断や治療を推奨するものではありません。
記事中で取り上げている薬剤情報は、信頼できる資料に基づいて正確に記載していますが、
漫画内の会話やエピソードはフィクションであり、実際の医療現場の状況とは異なる場合があります。
実際の診療にあたっては、必ず医師や薬剤師等の専門家にご相談いただき、最新の添付文書等をご確認ください。
本記事の内容に基づく自己判断による治療や投薬等によって生じた損害について、当サイトは一切の責任を負いかねます。

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