クラリスロマイシン(クラリス錠)併用禁忌にご注意を!
抗菌薬として広く処方されるクラリスロマイシン(クラリス錠)は、呼吸器感染症や耳鼻科系疾患を中心に日常的に使われる薬剤です。しかし、臨床現場で見落としがちなのが「併用禁忌薬の多さ」です。
覚えやすくするするために冒険物語風にしてみたので良ければ見てみてください。
基本情報
効能又は効果
【一般感染症】
〈適応菌種〉
本剤に感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、インフルエンザ菌、レジオネラ属、カンピロバクター属、ペプトストレプトコッカス属、クラミジア属、マイコプラズマ属
〈適応症〉
表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、慢性膿皮症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、肛門周囲膿瘍、咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、肺炎、肺膿瘍、慢性呼吸器病変の二次感染、尿道炎、子宮頸管炎、感染性腸炎、中耳炎、副鼻腔炎、歯周組織炎、歯冠周囲炎、顎炎
【非結核性抗酸菌症】
〈適応菌種〉
本剤に感性のマイコバクテリウム属
〈適応症〉
マイコバクテリウム・アビウムコンプレックス(MAC)症を含む非結核性抗酸菌症
【ヘリコバクター・ピロリ感染症】
〈適応菌種〉
本剤に感性のヘリコバクター・ピロリ
〈適応症〉
胃潰瘍・十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃癌に対する内視鏡的治療後胃におけるヘリコバクター・ピロリ感染症、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎
用法及び用量
【一般感染症】
通常、成人にはクラリスロマイシンとして1日400mg(力価)を2回に分けて経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
【非結核性抗酸菌症】
通常、成人にはクラリスロマイシンとして1日800mg(力価)を2回に分けて経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
【ヘリコバクター・ピロリ感染症】
通常、成人にはクラリスロマイシンとして1回200mg(力価)、アモキシシリン水和物として1回750mg(力価)及びプロトンポンプインヒビターの3剤を同時に1日2回、7日間経口投与する。
なお、クラリスロマイシンは、必要に応じて適宜増量することができる。ただし、1回400mg(力価)1日2回を上限とする。
クラリスロマイシンの代謝と相互作用
クラリスはCYP3A4阻害作用を有し、他薬剤の血中濃度を上昇させるリスクがあります。これにより、QT延長や重篤な副作用を引き起こす恐れのある薬剤との併用は禁忌とされています。
併用禁忌の代表例(2025.5)
以下は、クラリスと併用してはいけない主な薬剤です。
※ジヒデルゴット、ピモジドは販売中止のため一覧から抜きました。
※適応が複数ある薬剤は、○○他で省略しています。
- エルゴタミン配合剤(クリアミン) 適応:血管性頭痛 他
- スボレキサント(ベルソムラ) 適応:不眠症
- ダリドレキサント(クービビック) 適応:不眠症
- ロミタピド(ジャクスタピッド) 適応:ホモ接合体家族性高コレステロール血症
- チカグレロル(ブリリンタ) 適応:陳旧性心筋梗塞
- イブルチニブ(イムブルビカ) 適応:慢性リンパ性白血病 他
- ベネトクラクス(ベネクレクスタ)※用量漸増期 適応:再発又は難治性の慢性リンパ性白血病他
- イバブラジン(コララン) 適応:同調律かつ投与開始時の安静時心拍数が75回/分以上の慢性心不全
- フィネレノン(ケレンディア) 適応:2型糖尿病を合併する慢性腎臓病
- タダラフィル(アドシルカ) 適応:肺動脈性肺高血圧症
- ルラシドン(ラツーダ) 適応:統合失調症 他
- アナモレリン(エドルミズ) 適応:非小細胞肺癌、胃癌、膵癌、大腸癌におけるがん悪質液
- イサブコナゾニウム(クレセンバ) 適応:アスペルギルス症 ムーコル症 クリプトコックス症
これらの薬剤はいずれも、クラリスと併用することで重篤な副作用のリスクが高まるため、処方時には必ずチェックが必要です。
併用禁忌を見落とさない工夫
📖 冒険のストーリーで覚えるクラリス併用禁忌薬
クリアミン(エルゴタミン配合)、ジヒデルゴット(ジヒドロエルゴタミン)──頭を悩ます門を抜け、眠れる双子の龍ベソムラ(スボレキサント)とクービビック(ダリドレキサント)を起こさぬように。ジャクスタピッド(ロミタピド)が脂と戦う。コララン(イバブラジン)と心臓の鼓動を聞きながら、ベネクレクスタ(ベネトクラクス)とイムブルビカ(イブルチニブ)の血の試練を乗り越え、クレセンバ(イサブコナゾニウム)が見えぬカビと戦った。ラツーダ(ルラシドン)で心を鎮め、エドルミズ(アナモレリン)は「生きる力を取り戻せ」とささやく。ケレンディア(フィネレノン)の腎の川を渡り、肺の塔アドシルカ(タダラフィル)で古の扉を開くと、ブリリンタ(チカグレロル)と輝く宝があった。

これほど禁忌が多いのに使用頻度も高く、また短期に服用されるため見落とされると危険です。処方時には毎回添付文書で確認が確実ですが、少しでも記憶に残るようにと今回はRPGのお話風にしてみました。
クラリスには併用禁忌だけでなく、併用注意に分類される薬剤も数多くあります。「併用注意なら併用できる」と安易に判断してしまうと、重篤な副作用につながる恐れがあるため要注意です。疑義照会を行うべきか、患者に体調変化の注意喚起をすべきか、薬剤師としての判断と観察が非常に重要です。
おわりに
クラリスは非常に使いやすい抗菌薬である一方、CYP阻害による相互作用には細心の注意が必要です。特に慢性疾患治療薬やがん領域薬との併用が増える現代において、薬剤師としてのチェックの目が問われています。
ぜひ、ご自身の薬局でもクラリスと併用禁忌薬の一覧を掲示するなど、情報共有を工夫してみてください!
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