普段患者さんの目には触れないけれど、薬剤師には一番大切かもしれない処方監査と疑義照会という仕事があります。そんな処方監査と疑義照会を体験してみましょう。
処方監査と疑義照会とは
処方監査はお医者さんの書いた処方せんに誤りがないか確認すること。そして、疑義照会はこの処方箋本当にあっていますか?と確認すること。
お医者さんが間違えるなんてと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、意外に多く、厚生労働省の発表によるとなんと全体の処方箋のうち3.5%は疑義照会されています。
ただし、誤りと言っても「いつも血圧の薬もらってたけど、今日はついでに花粉症の薬も出してくれるって言ってたのに出てないの?」や、「実はこの薬飲み忘れで余ってたんだけど、先生に言うの忘れちゃった。これいらないから削除して?」のようなものから、「体重ごとに薬の量が変わるお薬でお薬の量が間違ってませんか?」「似た名前の別の薬と間違えてませんか?」のような間違いまで様々。
最近だとご存じの方も多いかもしれませんが薬の流通が不安定なせいで在庫がなく、「○○錠がないので、同じお薬で○○シロップに変更していただけませんか?」のような薬局都合の疑義照会もあります。
処方監査の例
医療用医薬品にはすべて添付文書と呼ばれる、薬の説明書がついています。薬の使う量(「1日1回、1回30㎎ 朝食後」や「1日2回点眼」など)、使ってはいけない人(子供には使えない、腎臓の悪い人には使えないなど)、副作用(薬の目的とは異なる体に良くない作用)の他、医薬品を正しく使うために必要な情報が盛り込まれています。
基本的に薬は添付文書通りに使用されるもので、これに逸脱した処方はすべて疑義照会の対象となります。
例えば7歳のお子様に以下の薬が処方されたとします。※以下のお薬はすべて架空のものです
「ネツサマスン錠 1回1錠1日3回毎食後」
ネツサマスン錠の添付文書を確認すると、「通常成人には1回1錠 1日3回毎食後」と記載があった場合原則お子様には使用できません。
そこで別のお薬、ネツサマスンシロップ小児用の添付文書を見ると「1~7歳の小児には1回1ml 1日3回毎食後」とあれば、こちらのほうがより適しているのではないか?と判断するのが処方監査です。
※もちろん子供用シロップが製品として存在せず、大人用を減らして飲むしかない場合もありますがややこしくなるので割愛します。
疑義照会の例
処方箋に疑問点を見つけたら医師に確認してからでないとお薬は患者さんに渡してはいけない決まりになっています。
そこで疑義照会です。
上の例だと先生には「ネツサマスン錠は通常お子様には使用されないお薬ですが、同じお薬で子供用のネツサマスンシロップ小児用がございます。こちらへの変更をお願いしたいのですがいかがでしょう?」のような電話をすることになります。
処方監査と疑義照会に挑戦
以下の「こどもしょほうせん」と「くすりのせつめいしょ」を見比べての問題点を見つけて疑義照会してみましょう。
さいりゅうというのは細粒と書き、粉薬のことです。
左上がお薬を使う人の名前と年齢、右上は処方してくれた病院とお医者さんの名前、中央にお薬の量と使い方が書かれており、お薬が準備できたら下に薬を作った(調剤した)人の名前を書きます。
お子様の挑戦用に印刷される場合、画像のダウンロードはこちら
回答
シロップは1~3歳までしか使えません。5歳のお子様なのでさいりゅうに変更できないか疑義が必要になります。
「はなすっきりんシロップとせきとめーるシロップをごしょほういただいていますが、こちらは3さいまでしかつかえないおくすりなので さいりゅうにへんこうできますか?」
あくまでも架空のお薬なので、実際にシロップか粉かはお子様の好みで決まりますし、通常錠剤が処方される年齢になってもまだ錠剤はのめないんですと言って粉薬が処方されることもあります。
お子様にこういった仕事もあるんだね、という体験の一部として受け取っていただけると幸いです。
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