昨日選定療養費の薬剤料についての記事を公開しました。
調剤報酬の枠組みや薬剤料の求め方について詳しくは前記事をご参照ください。

今日は2種類以上の薬を服用中に用法が変わることで選定療養費が変わったトラブルの実体験から、用法と選定療養費の関係を見ていきたいと思います。
処方の前提条件
前回同様、今回見る処方箋の例では条件を簡単にするために以下のものは固定します。
調剤基本料は1の45点 その他の調剤基本料に対する加算はなし
服薬管理指導料は通常、再調剤の45点
自己負担割合は3割
アムロジンOD錠10㎎薬価16.3円 ジェネリック最高価格14.3円
クレストール5mg薬価30.6円、ジェネリックロスバスタチン最高薬価18.4円
ジェネリック希望の場合最高薬価のメーカーを選択することとする。薬価は2025.7現在のものとする。
用法が異なる場合
処方例2)アムロジンOD錠10㎎ 1錠分1朝食後 60日
クレストール錠5㎎ 1錠分1夕食後 60日
上記処方についてまた①ジェネリックの場合、②医師指示先発の場合、③患者希望先発の場合で自己負担額を求めます。
まず薬剤料以外の部分
調剤基本料は1→45点
服薬管理指導料は通常、再調剤→45点
薬剤調整料 内服→24点
内服→24点
※用法が異なるので2剤
調剤管理料 内服29日以降→60点
合計198点
①ジェネリックの場合
アムロジピンジェネリック最高価格14.3円→1日1点→60日分で60点
ロスバスタチン5mgジェネリック最高薬価18.4円→1日2点→60日分で120点
調剤報酬合計点数198点+60点+120点=378点
自己負担額3780円×0.3(3割負担)=1134円→1130円
②医師指示先発の場合
アムロジンOD錠10㎎薬価16.3円→2点→60日分で120点
クレストール5mg薬価30.6円→3点→60日分で180点
調剤報酬合計点数198点+120点+180点=498点
自己負担額4980円×0.3=1494円→1490円
③患者希望先発の場合
保険外となる自己負担分を求めます。
アムロジンOD錠10㎎とジェネリックの差額=16.3円ー14.3円=2円
その1/4は0.5円=1点→60日で60点
クレストール錠5㎎とジェネリックの差額=30.6円ー18.4円=12.2円
その1/4は3.05円=1点→60日で60点
調剤報酬合計点数は②と同じ498点 このうち60点+60点=120点が保険外となる
保険対象自己負担 498点₋120点=378点→3780円×0.3(3割負担)=1134円=1130円
保険外自己負担 120点=1200円×1.1(消費税)=1320円
自己負担合計1130円+1320円=2450円
用法が同じ場合
ここで以下のように処方が変わったとします。
処方例3)アムロジンOD錠10㎎1錠分1朝食後 60日
クレストール錠5㎎1錠分1朝食後 60日
こうなるとアムロジンとクレストールは用法が同じということで1剤としてカウントされます。
薬剤料以外の部分の点数の変更は比較的わかりやすいかと思います。
調剤基本料は1→45点
服薬管理指導料は通常、再調剤→45点
調剤管理料内服 24点 (1剤のため1回のみカウント)
服薬管理指導料内服29日以上 60点
合計174点
これだけでなくさらに薬剤料も変わる場合があります。
①ジェネリックの場合
アムロジピンジェネリック最高価格14.3円
ロスバスタチン5mgジェネリック最高薬価18.4円
1剤で1日当たりの薬価を計算するため、14.3円+18.4円=32.7円→3点
60日分で3点×60=180点
調剤報酬合計点数174点+180点=354点
自己負担額3540円×0.3=1062円→1060円
②医師指示先発の場合
アムロジンOD錠10㎎薬価16.3円
クレストール5mg薬価30.6円
1剤で1日当たりの薬価を計算するため、16.3円+30.6円=46.9円→5点
60日分で5点×60=300点
調剤報酬合計点数174点+300点=474点
自己負担額4740円×0.3=1422円→1420円
③患者希望先発の場合
保険外となる自己負担分を求めます。
アムロジンOD錠10㎎とジェネリックの差額=16.3円ー14.3円=2円
その1/4は0.5円
クレストール錠5㎎とジェネリックの差額=30.6円ー18.4円=12.2円
その1/4は3.05円
選定療養費も1剤ごとに計算するので1日差額合計3.55円→1日1点
60日分で60点
調剤報酬合計点数は②と同じ474点。このうち60点分が保険外自己負担となる。
保険対象自己負担 474点₋60点=414点→4140円×0.3(3割負担)=1242円=1240円
保険外自己負担 60点=600円×1.1(消費税)=660円
自己負担合計1240円+660円=1900円
用法変更したことによる変化まとめ
2剤と数えるとき | 1剤と数えるとき | |
---|---|---|
後発品 | 1130 | 1060 |
医師指示先発品 | 1490 | 1420 |
患者希望先発 | 2450 | 1900 |
用法が変わっても後発品や医師指示先発品では大きな差はありませんが、選定療養の場合は1日1点自己負担分が丸々変わるのでインパクトが大きいですね。
ちなみにスタチンは夕食後に服用した方がいいとも言われていますが、ストロングスタチンに関してはいつ服用しても問題ありません。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
今回は朝食後と夕食後から朝食後に用法をまとめたことによる変化でしたが、当薬局では医師の先生が片方用法を記入漏れて以下の処方箋になっているのをそのまま入力してしまったがためにお会計が高くなってしまうという事件がありました。皆様もご注意ください。
Rp)○○錠1日1回夕食後 30日
△△錠1日1回 30日
免責事項
本記事は、一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断や治療を推奨するものではありません。
記事中で取り上げている薬剤情報は、信頼できる資料に基づいて正確に記載していますが、実際の診療にあたっては、必ず医師や薬剤師等の専門家にご相談いただき、最新の調剤報酬、添付文書等をご確認ください。
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