



今回は「帯状疱疹と単純疱疹の治療薬の違い」について、薬剤師カロが解説してくれる4コマ漫画をご紹介します。
単純疱疹も帯状疱疹も「ヘルペスウイルス」が原因ですが、実は種類も治療法も違います。
「同じ薬なのに用量が全然違う!」という疑問に対して、カロが丁寧に答えてくれます。
【基本情報】
◆ 単純疱疹(Herpes Simplex Virus:HSV)
- 原因ウイルス:HSV-1(口唇)、HSV-2(性器など)
- 再発:あり(同じ部位に繰り返す)
- 治療薬:アシクロビル、バラシクロビルなど(比較的少量・短期間)
◆ 帯状疱疹(Varicella Zoster Virus:VZV)
- 原因ウイルス:水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV=ヘルペスウイルス科の3型)
- 再発:通常は一度のみ(神経節に沿って片側に帯状)
- 治療薬:同じくアシクロビル系などを使用するが、高用量・長期間必要になる
【漫画の補足ポイント】
● 「同じ薬=同じウイルス」ではない!
抗ウイルス薬は共通して使われることが多いですが、病原ウイルスの型によって病態が大きく異なります。
● 帯状疱疹は“フル装備”で対応!
アシクロビルは帯状疱疹治療時、**単純疱疹の4倍量(1回800mg、1日5回)**で処方されることもあり、患者から「え、量多すぎない…?」と驚かれることもしばしば。
薬品名 | 主な用法・用量(成人) | 禁忌 | その他注意事項 |
---|---|---|---|
バラシクロビル (バルトレックス) | 帯状疱疹:1000mgを1日3回、7日間 単純疱疹:500mgを1日2回、5日間 | 本剤の成分およびアシクロビル に過敏症の既往 | Ccr50未満では用量調整必要。高齢者では水分補給の指導を。 |
ファムシクロビル (ファムビル) | 帯状疱疹:500mgを1日3回、7日間 単純疱疹:250mgを1日3回、5日間 再発単純疱疹:1回1000mgを2回 | 本剤の成分に過敏症の既往 | Ccr60未満で用量調整。 |
アシクロビル (ゾビラックス) | 帯状疱疹:800mgを1日5回、7日間 単純疱疹:200mgを1日5回、5日間(10日のことも) | 本剤の成分およびバラシクロビル に過敏症の既往 | Ccr25未満で用量調整。点滴使用時は十分な補液が必要。 |
アメナメビル (アメナリーフ) | 帯状疱疹:400mgを1日1回食後、7日間 再発単純疱疹:1200mgを1回食後 | 本剤の成分に過敏症の既往 リファンピシン投与中 | 空腹では吸収ダウン。CYP3A誘導薬との併用注意。 |
バルトレックス:造血幹細胞移植における単純ヘルペスウイルス感染症の再発抑制、水痘、性器ヘルペスの再発抑制、小児にも適応あり
ゾビラックス:造血幹細胞移植における単純ヘルペスウイルス感染症の再発抑制、小児性器ヘルペスの再発抑制、小児にも適応あり
【実務のワンポイント】
- 帯状疱疹の用量設定は「ウイルスの再活性化が神経領域に沿って広範囲に起きること」「後遺症のリスクが高いこと」などが背景にあります。
- 同じ薬でも用量・投与期間・適応症を見落とさないように、処方監査時にしっかり確認を!
【もうひとつの小ネタ】
帯状疱疹はワクチンで予防できる唯一のヘルペスウイルス疾患です(50歳以上対象:シングリックスなど)。
単純疱疹は現時点では定期接種ワクチンはありません。
【結びの一言】
薬の名前が同じでも、ウイルスが違えば戦い方も変わります。
患者さんが不安を感じやすい「薬の量」や「病名の違い」について、私たち薬剤師がきちんと説明できると安心感につながりますね。
本記事は、一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断や治療を推奨するものではありません。
記事中で取り上げている薬剤情報は、信頼できる資料に基づいて正確に記載していますが、漫画内の会話やエピソードはフィクションであり、実際の医療現場の状況とは異なる場合があります。
実際の診療にあたっては、必ず医師や薬剤師等の専門家にご相談いただき、最新の添付文書等をご確認ください。
本記事の内容に基づく自己判断による治療や投薬等によって生じた損害について、当サイトは一切の責任を負いかねます。
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