



今回はイグザレルト錠の紹介です
抗凝固薬として日常的に処方されることの多いイグザレルト(リバーロキサバン)。今回は、**併用禁忌が意外と多い!**という注意点をテーマにした4コマ漫画を作成しました。
薬局で処方箋を見て「これ禁忌じゃない?」とヒヤッとした経験、皆さんもありますよね…。
基本情報の整理(添付文書準拠)
- 一般名:リバーロキサバン(Rivaroxaban)
- 製品名:イグザレルト錠(先発)、各種ジェネリック(2024年発売)
- 適応症:
成人- 非弁膜症性心房細動における脳卒中および全身性塞栓症の予防
- 静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症(DVT)および肺塞栓症(PE))の治療・再発抑制
小児 - 静脈血栓塞栓症の治療・再発抑制
- Fontan手術施工後における血栓塞栓形成の抑制
- 用法・用量:
- 非弁膜症性心房細動における脳卒中および全身性塞栓症の予防には15㎎を1日1回、食後に服用 Ccr15~49ml/minでは10㎎/日へ減量、ただしCcr15~30では適否を慎重に判断
- 深部静脈血栓症および肺塞栓症では最初3週間15㎎を1日2回食後、その後15㎎を1日1回食後 体重30㎏以上の小児には15㎎を1日1回食後
- Fontan手術施行後 体重50㎏以上の小児に10㎎を1日1回
- 禁忌:
- 本剤の成分に過敏症の既往、活動性出血、凝固障害を伴う肝疾患、中等度以上の肝障害、(非弁膜症で)クレアチニンクリアランス15未満、(そのほかの適応で)クレアチニンクリアランス30未満、妊婦、急性細菌性心内膜炎、
- 併用禁忌薬に注意(後述)
漫画の補足解説:意外と多い「併用禁忌薬」
イグザレルトはCYP3A4およびP-gpで代謝されるため、これらを強く阻害または誘導する薬剤との併用で血中濃度が大きく変動します。
❌ 代表的な併用禁忌薬
- イトラコナゾール(他ボサコナゾール、ボリコナゾール、ミコナゾール、ケトコナゾール)
- リトナビルなどのHIV薬(アタザナビル、ダルナビル、ホスアンプレナビル)
- エンシトレルビル(ゾコーバ®):コロナ治療薬でも話題になりました
いずれも併用により出血リスク増大が報告されており、処方箋監査で見逃すと重大な有害事象につながりかねません。
DOACの比較
日本で発売されているほかのDOACと比較してみましょう。
他と比べても禁忌が多い印象です。用法用量など表には十分に描き切れていないものがありますので、実際の診療においては必ず最新の添付文書をご参照ください。
商品名(一般名) | 主な適応症 | 用法・用量(通常/減量) | 主な禁忌 |
---|---|---|---|
プラザキサ (ダビガトラン) | 非 | 150mgを1日2回 110mgを1日2回(腎機能低下等で減量Ccr30-50) | Ccr30未満(透析含む)、出血症状、出血リスク、 脊椎硬膜外カテーテル、イトラコナゾール |
イグザレルト (リバーロキサバン) | 非、静 | 15mgを1日1回 10mgを1日1回(腎機能低下等で減量)詳細は上記 | 詳細は上記 |
エリキュース (アピキサバン) | 非、静 | 非:5mgを1日2回/2.5mgを1日2回※1 静:10㎎を1日2回7日間後5㎎を1日2回 | 出血症状、出血リスク、 非:Ccr15未満、静:Ccr30未満 |
リクシアナ (エドキサバン) | 非、静、慢性、整形 | 非:60mgを1日1回(体重60㎏以上)/30mgを1日1回(60㎏以下)さらに高リスクで15㎎※2 静&慢性:60mgを1日1回(体重60㎏以上)/30mgを1日1回(60㎏以下) 整形:1日1回30㎎ /Ccr30-50で15㎎への減量を検討 | 出血症状、急性細菌性心内膜炎 非、静、慢性:Ccr15未満 整形:Ccr30未満 |
非;非弁膜症性心房細動による脳梗塞・塞栓症予防 |
静;静脈血栓塞栓症の治療・再発予防 |
慢性;慢性血栓塞栓性肺高血圧症患者における血栓塞栓成型の抑制 |
整形;下肢整形外科手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制 ※1 80歳以上、体重60㎏以下、Cr1.5以上 ※2 80歳以上、体重45㎏以下Ccr15~30、NSAIDs常用、抗血小板剤使用 |
実務上の注意点(薬剤師向け)
- ✅ 複数科からの処方を一括で持参する患者さんに注意
→ 今回の漫画のように、内科+皮膚科+循環器など、複数診療科の薬が「偶然集まってしまう」ケースが要注意です。 - ✅ 相互作用チェックのタイミングは“処方前”が理想
→ 特にゾコーバは処方日数が短く、患者さんに届いてからでは遅い場合も…。 - ✅ 添付文書だけでなく、インタビューフォームや各社の情報提供も確認を
→2025.5.7時点で 一部ジェネリックには適応の違いがあります。
例えばリバーロキサバン「サワイ」の適応は「非弁膜性心房細動患者における~」
のみ。静脈血栓塞栓症に適応ないので注意してください。
AG(オーソライズド・ジェネリック)である「バイエル」なら静脈血栓塞栓症は
カバーしていますが、小児にはやはり適応がないので注意。
漫画に入りきらなかった補足ネタ
- 💡ジェネリック登場で薬価が約半額
→ イグザレルト10㎎331.6円、15㎎437.2円
ジェネリック:15mg=161.3円、15mg=226.7円
※2025.4薬価 - 💡飲み忘れた場合の対応も重要
→ 基本は気付いた時点で1回分だけ服用、2錠まとめてはNG!
結びに:薬剤師は“禁忌マップナビゲーター”です
処方箋は一見問題なく見えても、「隣にもう1枚ある処方箋」で地雷を踏むこともあります。
今回の漫画が、そんな“実はあるある”なリスクの気づきにつながれば嬉しいです。
※本記事は、一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断や治療を推奨するものではありません。
記事中で取り上げている薬剤情報は、信頼できる資料に基づいて正確に記載していますが、漫画内の会話やエピソードはフィクションであり、実際の医療現場の状況とは異なる場合があります。
実際の診療にあたっては、必ず医師や薬剤師等の専門家にご相談いただき、最新の添付文書等をご確認ください。
本記事の内容に基づく自己判断による治療や投薬等によって生じた損害について、当サイトは一切の責任を負いかねます。
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