



ゼップバウンドとマンジャロって、別物なの?
今回はGLP-1受容体作動薬「ゼップバウンド」についての紹介です。
でも、実はこの薬…「マンジャロ」と中身が同じってご存知でしたか?
今回の4コマでは、そのモヤっとしがちな違いを、薬剤師カロがツッコミを交えながら楽しく解説します!
【今回の漫画のあらすじ】
ゼップバウンドとマンジャロを見比べたカロが語り出します。
「これはチルゼパチドという成分で、GIPとGLP-1両方に作用する“デュアルアゴニスト”なんです!」
「つまり…二刀流ってことだね!」(ドヤッ)
それを聞いた同僚薬剤師が一言。
「……昼と夜でお弁当のパッケージ変えただけみたいだね」
突然の雑なたとえに、カロはあぜん。
「そんな雑なたとえー!?」
…という、ゆるく学べる4コマです!
基本情報
・適応:肥満症(BMI27以上かつ2つ以上の肥満関連健康被害orBMI35以上)
・用法・用量:週1回2.5㎎から開始し、4週間の間隔で2.5㎎ずつ増量し、週1回10㎎皮下注射する。最大週1回15㎎まで増量できる。
・禁忌:本剤の成分に対し過敏症の既往歴、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡、糖尿病性前昏睡、1型糖尿病、2型糖尿病を有する重症感染症、手術等の緊急患者
ゼップバウンドとマンジャロ、何が違うの?
比較項目 | ゼップバウンド | マンジャロ |
---|---|---|
有効成分 | チルゼパチド(同じ) | チルゼパチド(同じ) |
適応症 | 肥満症 | 2型糖尿病 |
発売日 | 肥満症治療薬として2025年4月11日 | 糖尿病治療薬として2023年4月 |
見た目・製剤 | ペン型注射。形状はほぼ同一だが、ラベル・箱の色が異なる | 同左 |
保険適用 | BMI基準・合併症の有無などで算定判断に注意が必要 | 2型糖尿病の診断が必須 |
チルゼパチドとは?(作用機序)
- GIP(胃抑制ペプチド)受容体
- GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)受容体
この**2つに同時に作用する「デュアルアゴニスト」**であることが最大の特徴。
血糖コントロールだけでなく、強い食欲抑制・体重減少効果も期待されています。
GIPとGLP-1ってそもそも何?
ホルモン名 | 正式名 | 出る場所 | 主な役割 |
---|---|---|---|
GIP | 胃抑制ポリペプチド (Glucose-dependent Insulinotropic Polypeptide) | 小腸上部(十二指腸など) | 血糖に応じてインスリンを出すよう膵臓に指令する |
GLP-1 | グルカゴン様ペプチド-1 (Glucagon-like Peptide-1) | 小腸下部(回腸など) | インスリン分泌↑、グルカゴン分泌↓、胃の動き↓、食欲↓ |
GIP(胃抑制ポリペプチド)
- 食事で血糖が上がると、GIPが膵臓に働きかけてインスリン分泌を促進します。
- ただし、**肥満や糖尿病ではGIPが効きにくくなる(耐性がある)**とされ、単独での治療にはあまり使われていませんでした。
GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)
- 食後に分泌され、血糖が高いときにだけインスリンを増やす。
- さらに、グルカゴン(血糖を上げるホルモン)を抑える、胃の動きを遅らせて満腹感を出す、脳に働きかけて食欲を抑えるなど、多彩な作用があります。
💉なぜ“デュアル”だと良いの?
ゼップバウンドやマンジャロのようなチルゼパチド製剤は、
GLP-1とGIPの両方に作用します。
つまり…
- GLP-1で満腹感・食欲抑制・血糖コントロール!
- GIPでさらにインスリン促進・脂肪代謝改善効果も!?
という “二刀流”のアプローチで、
特に体重減少効果が大きく期待されているのです。
💉まとめ(ちょーざっくり)
- GIP:「食べたよ!インスリン出して!」と膵臓に伝える係
- GLP-1:「血糖上げすぎないでね、あと食べすぎ注意!」と全体をコントロールする係
- デュアルアゴニスト:「両方の指令を一気に出せる司令官」みたいな存在
実務での注意点・ポイント
- 製剤名・適応の確認をしっかり!
→ 同じ成分でも「ゼップバウンド」と「マンジャロ」では、処方意図が全く違うため、処方監査・疑義照会時には適応症の確認が必須です。 - ラベル・箱の色で区別できるが、ピッキング時は要注意
→ 製剤が似ているため、薬局内の保管方法や選薬時の確認体制が重要です。 - ダイエット目的の誤使用・SNS誤情報に注意!
→ 保険適用条件や使用対象が明確に定められており、安易な使用や自己注射を誘発しない指導が必要です。
漫画に入れきれなかった豆知識
- ゼップバウンドは週1回投与ですが、「前回から72時間以上空いていればすぐ投与OK、未満なら次回まで待つ」といった投与忘れ時のルールがあります。
- 初期は悪心・嘔吐・下痢などの胃腸障害に注意。脱水や継続投与の忍容性に影響するため、指導時に説明を。
おわりに
今回のテーマは「ゼップバウンドとマンジャロの違い」。
成分は同じでも「パッケージ」や「使い方」が違う薬剤に、私たち薬剤師はどんな言葉で説明するか…そんな視点でも漫画を楽しんでいただけたら嬉しいです!
次回も“ちょっと笑えてちゃんと学べる”薬学4コマをお楽しみに!
免責事項
本記事は、一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断や治療を推奨するものではありません。
記事中で取り上げている薬剤情報は、信頼できる資料に基づいて正確に記載していますが、
漫画内の会話やエピソードはフィクションであり、実際の医療現場の状況とは異なる場合があります。
実際の診療にあたっては、必ず医師や薬剤師等の専門家にご相談いただき、最新の添付文書等をご確認ください。
本記事の内容に基づく自己判断による治療や投薬等によって生じた損害について、当サイトは一切の責任を負いません。
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