エンレストは1日1回?2回?ACE阻害薬・ARBからの切替と36時間ルール【4コマ】

エンレストって1日1回?2回? 切替の36時間ルールも確認! おくすり小ネタ漫画

「エンレストって1日2回じゃなかった?」と思ったら、まずは適応を確認。心不全と高血圧では、飲む回数が違います。さらに切替時は、前の薬がACE阻害薬なのか、ARBなのかも大切です。

4コマ

1コマ目。エンレストの服用回数は心不全と高血圧で異なる。
2コマ目。前回の薬歴にはACE阻害薬のレニベース。
3コマ目。ACE阻害薬からエンレストへの切替は36時間以上あける。
4コマ目。ロサルタンなどARBからの切替には36時間という規定はない。

※4コマ目の「今度はあけなくていい」は、ARBからの切替に36時間という規定がないという意味です。ARBとの併用を勧めるものではありません。

基本情報

項目内容
一般名サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物
分類アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)
錠剤の規格50mg・100mg・200mg
主な適応慢性心不全。100mg錠・200mg錠には高血圧症の適応もある
成人の慢性心不全での位置づけ標準的な治療を受けている患者が対象。ACE阻害薬またはARBから切り替えて投与する

サクビトリルの活性代謝物がネプリライシンを阻害し、バルサルタンがAT1受容体を遮断する薬です。今回は、成人の用法と切替時の確認に絞って見ていきます。小児の慢性心不全には別の体重別用量があり、粒状錠小児用もあります。PMDA電子添文:4〜6、18

心不全治療でのARNIの役割は、以前の「ファンタスティック4」の記事でも紹介しています。

漫画で記載したことの補足

心不全は1日2回、高血圧は1日1回

成人の通常用法は、次のように異なります。用量はサクビトリルバルサルタンとしての量です。

適応成人の通常用量回数・増量
慢性心不全1回50mgから開始1日2回。忍容性を確認し、2〜4週間ごとに段階的に1回200mgまで増量
高血圧症通常1回200mg1日1回。年齢・症状により適宜増減し、最大1回400mgを1日1回

高血圧症では、患者の状態やほかの降圧薬による治療状況などを踏まえ、100mgを1日1回からの開始も考慮します。「高血圧なら必ず200mg開始」とは限りません。PMDA電子添文:6、7.5

「エンレスト=1日2回」と薬名だけで覚えると、新人くんと同じところで迷ってしまいます。回数の違いに気づいたら、処方意図まで確認したいですね。

36時間あけるのは、ACE阻害薬との切替

漫画に出てきたレニベース(エナラプリル)はACE阻害薬です。ACE阻害薬の投与中、または中止後36時間以内の患者へのエンレスト投与は禁忌です。PMDA電子添文:2.2、8.1

切替の向きを含めて整理すると、こうなります。

切替間隔のルール確認したいこと
ACE阻害薬 → エンレスト少なくとも36時間あけるACE阻害薬の最終服用日時とエンレストの開始日時
エンレスト → ACE阻害薬エンレスト最終投与から36時間後までは投与しない逆方向でも間隔が必要
ARB → エンレスト投与間隔をあける時間の規定なし血圧・腎機能・併用薬などを踏まえた医師の指示。ARBは重ねて服用しない

根拠:PMDA電子添文:8.1/ノバルティスFAQ:用法及び用量

「昨日まで飲んでいた」だけでは、開始時刻は決まらない

3コマ目の確認を実務につなげるなら、「最後に飲んだのは何日の何時ですか?」まで聞くのがポイントです。

たとえば、月曜日の朝8時にACE阻害薬を最後に服用した場合、36時間後は火曜日の夜8時です。火曜日の朝8時では、まだ24時間しか経っていません。

薬歴やお薬手帳で前薬を確認し、実際の最終服用日時と処方医の開始指示を照合します。開始日時が不明な場合は確認し、患者さんにも「いつから飲むか」を具体的に伝えます。

どうして36時間?血管性浮腫のリスクがあるから

エンレストとACE阻害薬が重なると、ブラジキニンの分解が相加的に抑えられ、血管性浮腫のリスクが高まる可能性があります。このため、併用を避けるだけでなく、切替にも間隔が必要です。ノバルティスFAQ:36時間あける理由

薬歴では、エナラプリルのほか、イミダプリル、ペリンドプリル、リシノプリルなどのACE阻害薬にも目を向けます。PMDA電子添文:2.2

ARBからは「36時間」の規定なし。ただし併用は避ける

4コマ目のロサルタンはARBです。メーカーFAQでは、ARBからエンレストへ切り替える際、投与間隔をあける時間の規定はないとされています。実際の間隔は、患者背景を踏まえて医師が判断します。ノバルティスFAQ:ARBからの切替

エンレスト自体にバルサルタンが含まれるため、ARBを重ねると、腎機能障害・高カリウム血症・低血圧などが問題になります。電子添文上は「併用注意」で、メーカーFAQでは「併用すべきではない」と説明されています。「36時間ルールがない」と「一緒に飲んでよい」は別の話です。ノバルティスFAQ:ARBとの併用

切替前の薬が一包化されている場合や、配合剤にARBが含まれている場合も、残薬との重複を確認しておきたいところです。

その他かききれなかったこと

高血圧の処方なら、50mg錠にも注意

規格成人の慢性心不全高血圧症
錠50mg承認用法・用量あり承認なし
錠100mg承認用法・用量あり承認用法・用量あり
錠200mg承認用法・用量あり承認用法・用量あり

高血圧症に承認用法・用量があるのは、100mg錠と200mg錠です。「高血圧に50mg錠?」と思ったら、用量だけでなく規格の適応も確認します。エンレスト適正使用ガイド・高血圧症

また、100mg錠には割線がありますが、高血圧症に1回50mgを投与するのは承認外用量です。半錠にできる製剤かどうかと、その適応で使える用量かどうかは、分けて考えます。ノバルティスFAQ:半錠への分割

高血圧と心不全を合併していたら?

慢性心不全を合併する高血圧症では、原則として慢性心不全の用法・用量に従います。ただし、心不全の発症前から高血圧の治療目的で使用している場合などは、患者の状態に応じて適切な用法・用量を選択します。PMDA電子添文:7.6

なお、高血圧症では原則として第一選択薬としないとされています。一方、「ACE阻害薬またはARBから切り替えて投与する」という規定は成人の慢性心不全についてのものです。高血圧症でも前治療が必ずACE阻害薬・ARBでなければならない、という意味ではありません。適正使用ガイド・高血圧症

切替時にあわせて確認したいこと

服用回数と切替間隔に加えて、血圧・腎機能・血清カリウム値も確認します。開始時や増量時には、めまい・ふらつきなどの低血圧症状に注意が必要です。適正使用ガイド・高血圧症

顔・唇・舌・のどの腫れ、息苦しさなどは血管性浮腫を疑う症状です。こうした症状が出た場合は、服用を中止し、直ちに医療機関を受診するよう説明します。患者向医薬品ガイド

今回の確認ポイントは、「適応」「前薬」「最終服用日時」。回数だけでなく、前の薬からどうつなぐかまで確認したいですね。

参考資料・確認日

免責事項

本記事は、一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断や治療を推奨するものではありません。

記事中で取り上げている薬剤情報は、信頼できる資料に基づいて正確に記載するよう努めていますが、漫画内の会話やエピソードはフィクションです。

実際の診療・調剤にあたっては、最新の電子添文等をご確認ください。薬の中止・開始日時や服用量は、自己判断で変更せず、医師・薬剤師にご確認ください。

本記事の内容に基づく自己判断による治療や投薬等によって生じた損害について、当サイトは一切の責任を負いかねます。

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